趣味の養蜂歴20数年の人見吉昭さん(53歳)は駐在所のおまわりさんである。養蜂を始めたきっかけは、人見さんがおまわりさんであることに深い関係がある。昭和53年、府中市の大国魂神社で、分蜂したミツバチが境内に飛来して大騒ぎになった。通報を受けた人見さんが現場に駆けつけ、心配そうに見守る住民を尻目になんなく群るミツバチを収容してしまったのである。
「少年時代に郷里の北海道・名寄で転地養蜂で訪れた養蜂家の手伝いをした経験があったので、なんとか分蜂群を収容できました。このことが契機になってミツバチ飼育を始めたのです」と人見さんは当時を思い出しながら懐かしそうに話した。

養蜂の大ベテランである人見さんの名声を聞きつけ弟子入りを希望する人も多く、これまでに30人近い人を指導したという。現在、こうしたお弟子さんたちと共同で専用の蜂場を持ち30箱以上を飼育している。

人見さんは養蜂の楽しさを「休日を中心に仲間たちと一緒に汗を流しています。5月の採蜜時は、もうお祭り騒ぎで、作業の後はバーベキューで大いに盛り上がっています」と話していた。

久しぶりに蜂場を訪れた人見さんは、すべての巣箱を一つずつ丁寧に内検して、「病気の蜂もいないし、貯蜜もたっぷりあるので心配ありません。あとはダニ駆除の薬をセットすれば冬越しも大丈夫でしょう」と満足気だった。
人見さんたちのグループでは毎年、春と秋のお彼岸にはダニ駆除薬「アピスタン」を巣箱にセットすることにしている。

「今年はスズメバチが多いので“電撃ネット”を用意してきました。本当はハエやカ用なのですが、スズメバチにもいいかと思って…」。“電撃ネット”は、スイッチを押しながらハエやカなどを叩くと、高電圧で瞬間的に退治できるという代物で、実際にスズメバチで試してみると一撃で退治することができた。

「プロの養蜂家のようにハチミツがたくさん採れればいいというのではおもしろくないでしょう。趣味でやっているのだから、ハチミツの質やミツバチの種類にこだわっています。毎年、優秀な種蜂を仕入れて純粋種を増やしています」という人見さんのミツバチはどれも大変美しい。写真左はカーニオランの純粋種。写真右はイタリアンの純粋種。

養蜂仲間の栗山さんは“巣蜜づくり”に挑戦していた。自分で工夫して作った可動式の小枠を巣枠にセットして、巣蜜を採ろうというのだ。来春、蜜がたっぷり入った巣蜜が採れたら、巣ごとかぶりつくのを今から楽しみにしている。

人見さんは自宅で、素人が飼育するのは難しいといわれるニホンミツバチを飼育している。これはハチミツを採るためではなく、玉川大の蜜蜂科学研に研究用として提供するために飼育している。



府中市で農業を営む鹿島幸夫さん(67歳)は、人見さんの最も新しいお弟子さんの一人で、2001年2月から飼育を始めた。当初2群でスタートしたが、すでに6群にまで増やしている。
鹿島さんはこの春に2群から約50sを採蜜したといい、お弟子さんの中でも熱心で優秀な方のようだ。また、ブルーベリーの摘み取り園も経営していて、ミツバチを飼うようになってから、実の付き方も良いという。



人見さんは趣味の養蜂を通して地域ボランティア活動を続けている。これまで養護学校にハチミツを贈ったり、小学校でミツバチの生態学習をするなど、その活動は幅広く長期間にわたっている。退官にはまだ時間がある人見さんだが、退官後は中国で養蜂技術の指導をしたいという夢を持っている。すでに、中国語の勉強を始めていて準備は着々と進んでいるようだ。