蜜源の植物が花を咲かせる5月から6月にかけて、養蜂場は1年で最も忙しい時期を迎える。養蜂家が細心の注意と愛情を注いで育て上げたミツバチたちは、このときを待っていたとばかり、元気よく巣箱と花の間を何度となく往復して花蜜を集める。そんな5月下旬、武甲養蜂場(埼玉県横瀬町・浅見孝二氏経営)を取材した。
アカシアやトチなど蜜源植物に囲まれた武甲山麓の蜂場には、約40箱の巣箱が置かれ、浅見さんご夫妻とお父さん、若い女性には珍しいミツバチ好きの福島さんの4人が採蜜作業に忙しく立ち働いていた。

採蜜は、煙でミツバチをおとなしくさせて作業をしやすくする燻煙器の準備から始まる。
燻煙器に新聞紙と籾殻を入れ、火をつけ、いよいよ作業の開始である。

煙を吹きかけミツバチたちがおとなしくなったのを見計らって、巣箱のふたを開ける。
巣箱の中には、ミツバチがびっしり群がった巣枠が9枚入っている。巣枠はずっしりと重そうで、中にはハチミツがたっぷり蓄えられているようだ。

巣枠を慎重に取り出し、群がるミツバチを蜂ブラシでそっと払い落として、遠心分離機による採蜜工程に回す。

採蜜工程では、まず蜜刀で蜜ぶたを切り取り、ハチミツが分離しやすいようにする。これは奥さんの靖子さんの受け持ちである。
遠心分離機(離蜜機)に巣枠をセットして勢いよく回転させると、ハチミツが「シャーシャー」と音を立てながら分離され、ハチミツの甘い匂いがあたり一面に広がる。

底に溜まったハチミツを蜜こし器でこして瓶に詰めると、国産純粋ハチミツ「武甲のアカシア蜜」のできあがりである。

たまたま採蜜作業に出くわした通りがかりの人から、直販をして欲しいと声が掛かった。出来たての1.2s入りハチミツ2本を購入したご夫婦は「今日はラッキーだった。なかなか本物のハチミツが手に入らなくてね。目の前で採っているから安心だよ」とハチミツの瓶を大事そうに抱えて立ち去った。

「汗を流して働いたあと、ミツバチの羽音だけが聞こえる蜂場で食べる昼食は、何ものにも代えられない至福の時」と浅見さんは言う。日頃、喧騒のなかであわただしく食事を済ませている記者も、お昼をご一緒させてもらって、浅見さんの言葉を実感した。