ミツバチが私たちに与えてくれる恩恵は、ハチミツやローヤルゼリー、プロポリス、蜜ろうといった蜂生産品だけではありません。むしろ100種類あまりの農作物に対する花粉交配(ポリネーション)による恩恵の方がはるかに大きいといえます。すでに米国では、花粉交配による売り上げがハチミツと蜜ろうを合わせた生産高の100倍以上に達しています。近年、日本でもイチゴ栽培を中心にこうした傾向に拍車がかかり、ポリネーション専門の養蜂業者も増えています。今回は、武甲養蜂場(埼玉県横瀬町)の浅見孝二氏に同行してポリネーション用ミツバチの設置作業を取材しました。
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いまやミツバチはイチゴ栽培に欠かせない存在となっている ミツバチが受粉を助けることで、大きくて形のよいイチゴが大量に生産できる

イチゴ摘み取り農園のハウス内に設置する巣箱に、かわいらしいイラストをペイントする浅見さん
高温多湿で密閉されたハウス内で、ミツバチたちが生きていくのは相当に過酷なことだといえます。秋に1群(1万〜1万5,000匹前後)を貸し出し、シーズンが終わる翌春にはほとんど空になっていることも珍しくありません。そのため、採蜜用ミツバチの中から特に元気のよい蜂群を選び出しポリネーション用として貸し出します。

蜂場からポリネーション用の巣箱を運び出す

浅見さんのミツバチたちが活躍する舞台は、今年から新規就農した池田実さん(53歳)が経営するイチゴ摘み取り農園「長瀞イチゴランド」(埼玉県長瀞町)の鉄骨ガラスハウス内である。ポリネーション用のミツバチを依頼した池田さんは「ここを訪れるお客さんたちにおいしいイチゴをたくさん食べて欲しいので、ミツバチたちの助けを借りることにしました」と、2001年12月のオープンを目前に強力な助っ人の到着を喜んでいた。
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いよいよ巣箱がハウス内に運び込まれる

ハウスの一番奥に静かに巣箱を設置する いきなりミツバチ飛び出すのを防ぐため、巣門の周辺に水をかける
設置されて1〜2分後には巣門から這い出し、巣箱の新しい場所を覚えるために頭を巣箱の方向に向けて停空飛行を開始する
設置後5分もすると、活発にハウス内を飛び回りイチゴの花を見つけ出しては花粉を巣箱に運び始める

ミツバチのいるイチゴハウスといないハウスを比べた調査によると、正常果が2倍に増え、逆に奇形果や不受精果は半分に減少、収穫重量においては2〜3倍にも達したという結果が出ています。何も知らずに「最近のイチゴは大きくて形もよくて味もいいな」と食べていた記者だったが、今回の取材を通して新たなミツバチの恩恵を知ることになり、過酷な条件下で花粉交配に活躍するミツバチたちへの感謝の気持ちがさらに深まった。