暖かさに誘われて虫が這い出すという「啓蟄」が過ぎた3月9日、シーズンを前に蜂群の増勢に忙しく立ち働く武甲養蜂場の浅見さんご夫妻を訪問した。浅見さんは「花が少ないこの時期に給餌をして産卵を促しておけば、4〜6月の蜜源開花期に蜂群を最強の状態にしておけます。ですから養蜂家にとって今が1年で最も重要な時期だといえます。ただ、今年は例年になく花の咲くのが早くて、増勢が間に合うかどうか少々不安です」と話していた。

早春の蜂場では冬囲いに覆われたままの巣箱が静かに春の日差しを浴びていた。まだ、ミツバチたちは冬の眠りから覚めていないのだろうか。 ところが巣箱に近づいてよく見ると、想像を裏切る光景が目に入った。とっくに目覚めたミツバチたちは、早めに満開を迎えた梅の花蜜を求めて元気よく巣門を出入りしていたのだ。

「今日は糖液の補充をします」というと、浅見さん夫婦はさっそく作業にとりかかった。糖液は水2に対して砂糖1を溶かして作るのが基本だが、その時々の状況によって割合を変えるのだという。驚いたことに出来上がった糖液は青い色をしていた。これは使用した砂糖が青く着色されていたためである。
どうして青い砂糖なのかという疑問の答えは意外なものであった。「養蜂家向けに販売される砂糖と市販の砂糖に価格差があるため、本来の用途以外の使用を防ぐ目的で、わざわざ着色しているのです。なにかミツバチによい栄養分が入っているわけではありません」ということであった。

巣箱を開けると、どの巣枠にも働きバチがびっしり群っていて産卵は順調なようだ。

給餌枠を取り出し内検すると、思ったとおり一滴の糖液も残っていなかった。

給餌枠にたっぷり糖液を補給する。どうやらこれで今年も元気な働きバチがどんどん増えて10枚満群に、さらに継箱を上げて、アカシアの咲く頃には2段3段になっていることだろう。