ミツバチを利用して果樹や果菜類の花粉交配を行うことをポリネーションといいます。現在、日本でポリネーションを利用している主な農作物は、ハウス栽培ではイチゴ、スイカ、メロンなど、露地栽培ではウメ、リンゴ、ナシ、モモなどがあります。また、ダイコンやハクサイ、キャベツ、カボチャ、キュウリなどの野菜類にも導入され、その種類はゆうに100を超えています。ポリネーションの普及に伴い、これまでの採蜜主体の養蜂からポリネーション兼業やポリネーション専門に移行する養蜂家も急増しています。ポリネーションの実際に関しては「イチゴハウスのポリネーション」をご覧下さい。


イチゴの受粉を助けるミツバチ。ミツバチのおかげで奇形果や不受精果が極端に減少し、収量が2〜3倍に増えた。

ポリネーションが急速に普及した理由は、ハウス栽培、果樹栽培の増加と農薬による野外昆虫の減少が考えられます。密閉されたハウス栽培では風媒による受粉も、虫媒による受粉も期待できません。そのためハウス内にミツバチの巣箱を設置して受粉の手助けをしてもらうことになったのです。また、高度成長期の日本では、大量の農薬散布により花粉を運ぶ野外昆虫が急減し、果樹園では花が咲いても実がならないという深刻な事態が起きていました。こうした事態を解消するため、青森のリンゴ園が試しにミツバチの巣箱を置いてみたところ、不受精果の発生がなくなり、収量が2倍になりました。このことを知った果樹農家が相次ぎミツバチの導入を始め、今日では開花期の果樹園に巣箱が置かれているのはごく当たり前の光景になったのです。
密閉されたハウス内では、風媒や野外昆虫による花粉交配は期待できない。

ポリネーションへのミツバチ利用に関して問題がないではありません。特にイチゴの場合は年々栽培時期が早まり、9月に蜂群を入れ4月頃まで長期間にわたって使うため、貸し出した蜂群がほとんど空になって戻ってきます。イチゴ栽培期間中に2回に分けて導入するなどの対策もとられていますが、さらにイチゴ生産者と養蜂家が協力してミツバチを使い捨てにしない方法を研究する必要があるようです。

イチゴハウス内に設置された巣箱。屋外との温度差、餌不足、殺菌剤散布など、密閉されたハウス内は、ミツバチたちにとって必ずしも快適な環境とはいえない。
ハウス内の過酷な条件下で勢いが衰え始めた蜂群、巣門から出入りするミツバチの数が少なく元気もない。設置後2〜3ヵ月で、1万匹のミツバチが全滅してしまうケースもある。